Column


March 15 - column - ぜのさ〜が

「FF7みたいだね」
 コレは知人が(絶対友人でないので要注意!)家に遊びに来たときに言った 言葉だ。私はその時ゼノサーガをやっていたんです。確かに見れば見るほどF F7に似ているゲームだと思う……良くも悪くも。
「ん〜、似ているって言えばそうかな? まあ、スタッフが前にスクエアにい た人達だから、似てるのはしょうがないのかもしれない……なんだかんだ言っ ても名作だしね」
 私が答えると友人はしたり顔で頷く。言い忘れていたけれどこの知人、FF 7に関してファンを通り越してフリークなのである。
「じゃあ、面白いんだ?」
「ん〜……面白い……と思うよ。少なくとも飽きてはいないね」
 答える私の顔色を見て知人は怪訝な顔をする。何か言いたそうじゃないか。
「なによ? なんか言いたそうだけど?」
 私が言うと、知人は曖昧に頷きながら言った。
「いや……君ってさ、FF7がだいっ嫌いって言ってたじゃない?」
「うん……私には面白さがちっとも分からない」
「でも、これは面白いんだよね? どこが違うの?」
 OH! 何を言い始めると思いきやそんな事か……それでもFF7のフリー クって言えるのか? 私が唖然としていると知人は。
「だってさ、君がFF7を嫌いな所って、戦闘のたるさとか、マップの見にく さとか、戦闘バランスだったりするんだろ? ……僕が見た感じ条件は満たし てると思うけど」
 ……確かに。そう言われてみると何が良いんだろう……戦闘はたるいし、マ ップは見にくいし、戦闘バランスは良いとは言えない。FF7の悪いところは 全て持っている感じはするのだ。多分長所が短所を上回っているだけだと思う のだけれど、改めて考えてみるとそんな長所ってあったかなあ? 考え込む私 を横目で見つめながら、知人はわざとらしくポンと手を打ちモニターを指さした。
「わかった! ここがちがうんだろ?」
 知人の指さした先……モニターの向こうには水着のモモ(外見は12才ぐら いらしい)が魔法ステッキを持って立っている……
「そうだろう、そうだろうとも」
 知人はしたり顔で頷いた。
 ちがう、ちがうんだよ。そうじゃないんだよ。このキャラクターがこんな格 好をしているにはマリアナ海溝より深い理由があるんだよ。けっして「水着を 着ているモモが萌へ」なんて安易な理由で着ている訳じゃないんだ。信じてく れ!
 それから、私はこの知人に必死に説明をしたのだがこいつはただニヤニヤ笑 うだけで。「へ〜」としか言わなかった……
 私にとってのマリアナ海溝より深いわけは、知人には言い訳にしかならない って話し。所詮は”知人”だ!

アイテム:水着
防御力+1 T・PT(これが堪ると直接攻撃の技が買える……のだけれどモ モは基本的に後衛なので必要ない)獲得量25%アップ キャラクターが水着 姿になる。

(煎餅屋光圀)

March 14 - column - 白い日

ふられたつもりで生きていくには
駄目になりそうなほど
悲しみが消えない
〜涙のキッス

実は、サザンて深いんですね。いまになって知りました。


March 13 - column - 学習の成果

 もうすぐ卒業だ。この半年は実に中身の濃い半年だった。MacやAdobeのアプリケーションに触れて学習できたことは大きい。
 とくにPhotoshopは担任の先生が画像処理のプロだったこともあり、実用的な手法をいくつか学んだ。たとえば道路の写真から走っているバイクを消したり、逆に合成したりもできる。人の表情を変えたり(もう一枚同じ人物の写真が必要だけど)、しみやしわを消すなんてこともできる。女性には朗報だ。
 色の補正も習ったので、たとえば肌の色がちょっと赤っぽいな、と感じれば白く映えるように調整してしまう。ポスターなどはそうして美しく修正されているのだ。見事な上達。この学習の成果。

 ……いまアイコラつくったら、すっげえのができるんだろうな。
 つくんないけどさ。


March 12 - column - 韓日

 2002年はサッカーのW杯が韓日合同で開催される。いよいよ本番も近づき、日本代表の話題や、各国のスター選手の記事が雑誌や新聞の記事を飾ることが多くなってきた。これからますますヒートアップしていくだろう。
 まず言っておくのは決定当初からぼくはずっと韓日開催には反対してきたことだ。もちろんなんの影響力もない個人が反対を唱えようと時代が動くわけではないが、ぼくは経済的なメリットからも、政治的なメリットからも開催すべきではないと考えたし、なによりもこの開催で韓日の歴史問題がうやむやになって霧散してしまうのではないかと心配して反対している。
 以前朝日新聞に現在韓国が「軽日」傾向にあるという記事が載っていた。日本を外交や文化交流の対象として眼中から外す風潮が広がっているそうだ。そういう意味でなら一部のマスコミや学者を除いてずっと日本は「軽韓」傾向だと考えるが、両国がぼくは韓日の過去を語る上で声を大にして叫びたい事実がある。

 戦前の朝鮮時代(李氏朝鮮)には「朝鮮女性が日本人と性的交渉をもつことを国禁とする」すごい法律があった。しかも斬首刑です。

 この法律の存在を知ったときにはが世界が止った。信じられなかった。
 ぼくは「NOと言える教科書」という本で読んだのだが、呉善花さんが書いていることは確かなようなのでwebで内容を紹介しているページも載せておく。


 たとえば、ぼくが明治時代に朝鮮の女の子を好きになって交際したら、有無を言わさずその女の子は殺されてしまうわけだ。こんなんアリかい! ちなみに日本人の女性が韓国人の男性と関係を持っても罰則はなかったそうである。男尊女卑を通り越してあきれ果ててしまう。ただこれが当時の朝鮮半島の常識だったのだ。

 そしてこんな話がある。
 日朝修好条規が結ばれたころの朝鮮は飢饉で餓死者がでる状況だったそうだ。そのために日本人居留民相手にひそかに春を売る女性が現れた。食料を得るためだ。国禁である。
 数多くの女性が逮捕され、刑に処された。

 この一つの話でもって韓日のすべてを語るな、という理屈はわかる。扱っている本も少ないし。しかしあまり知られていない事実なのだが、当時から今日に至る状況を理解するのに重要な要因を含んでいるのだ。慰安婦問題も根は一緒なのだ。もし事実について間違いの指摘があれば、いくらでも訂正・謝罪をしよう。
 断っておくがぼくは韓国人が嫌いなわけではない。韓国人の同僚やクラスメイトを持ったこともないし、知人にもいない。旅行もしたことがない。だから実体の無い偏見で韓国人を判断しない。(在日朝鮮・韓国人に関してはいちいち友人に確認したことがないので断言できないが、もし友誼があれはそれは「好き」ってことだ)
 ぼくが願うのは都合のいい過去だけ主張しないでほしいということだけだ。
 日韓の溝は深い。だがその溝を安易な方法で埋めてしまうことが、未来へとつながるだろうか? 未だに疑問である。

参考資料
NOと言える教科書―真実の日韓関係史
藤岡信勝・井沢元彦共著 祥伝社
「日帝」だけでは歴史は語れない―反日の源流を検証する
呉善花 三光社

追伸・ぼくは呉善花さんはとてもフェアな人だと思う。


March 11 - column - 諭吉か妥協か

 随分前のことだけど、学校の飲み会で、同い年のクラスメイトと三人、初めてじっくり話をした思い出がある。
 ぼくたちは狭間の世代だ、と。バブルの盛り上がりも、少子化による優遇も受けることができなかった。そのわりに上の世代の無能さと、下の乱雑さに挟まれて苦労ばかりしている。割を食っている。
 酒もだいぶ回って、一人がぼくに聞いた。彼は背も高いしトークも奔っている。スポーツも得意そうだし、きっともてるだろうな。同い年なのに全然違うタイプだ。会ったときからそう感じていた。
「KENさん彼女いないの?」
「いないねー、ずっといないねー こんなん隠してもしょうがないし」
「どんなんがタイプなんだよ」
「さあね。あ、でもタバコを吸わないことかな。それだけでかなり限定されちゃうけどね。最近は」
「そんなこと言ってるからダメなんだよ妥協しなきゃ。妥協」
「うーん」
 長い飲みがついに終わり、終電間近の路上に出る。冷え切った外気が酔いの火照りを心地よく醒ましていく。もう一人の同い年の彼がうまそうにタバコをふかしている。彼は常に飄々としていて、遅刻魔のうえ遊びが大好き。サラリーマンのころは営業をさぼって昼間から池袋の店で……という人。この彼もまったくぼくとはタイプが違う。早退するときは「池袋の店に行くんですか?」なんて冷やかされる。ふと目があって、ぼくがからかった。
「やっぱ帰る前に池袋?」
「そんなとこ行かないっスよ!」
 二人して笑ったあと、彼が言った。
「これ正直な話。諭吉のチカラさえあればもう、どんなこともOK!」

 ぼくには諭吉か妥協しか残されていないらしい。


March 10 - column - 人間らしい生活

 クラスメイトの元編集者と話す機会があった。メンソールのタバコに火をつけて、彼女は話しかけてくる。
「KENちゃんはなにをやりたいの? やっぱ文を書く仕事をしたいわけ?」
「うーん。それはそうなんだけどね」
「編プロ入れば? すぐにでも入れんじゃん」
 編プロとは編集プロダクションのことだ。主に雑誌やムックなどの編集を下請けしている会社のことだ。彼女は雑誌編集の経験があって、いまはエディトリアルデザイナーを目指している。このへんの差というのは説明すると長いんだけど。
「体力ある? 徹夜とか」
「徹夜は平気だけど、タバコがねー」
「ああ、編集は無理だね」
 あっさりと言い切る。横ぶかしに紫煙を吐き出す。ぼくが嫌煙家だということを知っている彼女はゴメンね、と照れたような笑みを浮かべる。
「アタシもそうだけどタバコ吸わないとアタマがすっきりしない人がたくさんいるから」
 八割がたは喫煙者。しかも重度だという。
「とくにさ、赤入れてるときなんか、はっきり言うとかったるくてさー」
「赤?」
「あがって来た原稿を校正してるとき。神経使うわりに単純作業だから……」
 たしかに、疲れているときは億劫だろう。
「でもやりたいことよりそっちなんだ? 肺が悪いとかそういうんじゃないんでしょ?」
「……天敵なんだよ」

 グラフィックデザイナーを目指しているクラスメイトがいる。これも説明すると長いんだけど、ポスターやチラシなどをデザインする仕事と考えれば間違いない。就職活動が活発化しているいま、彼女は面接を受けては落ち込んでいる日々だ。作品を子ども扱いされたり、勘違いして自分の希望と違う職に応募してしまっていたり。
「今日行ったところは女性ばっかりの職場で、デザインの基礎から教えてくれるって言うんですけど、仕事がどれだけくるかわからないから給料は約束できないし、交通費も出せないって言うんです」
 彼女は都内には住んでいないので交通費だけで意外と負担になる。
「仕事も忙しくなると泊り込みみたいで、週に何日も家に帰れないみたいで。ここに、寝袋あるから、とか言われちゃうんですよ? やりたいことはできそうだけど、交通費が出なければ(収支が)マイナスになっていくだけだから……」
「それ一緒に暮らしましょう、って誘いだろ? 暮らしちまえよ」
「やだよー」
 別のクラスメイトがからかう。確かに会社に住んでしまえば交通費はかからないし一石二鳥ではある。
「でも若いうちだけだよ。飛び込んでみりゃあいいじゃん。根性見せろって脅しだろ」
「……飛び込めなかったなぁ」
 彼女はため息をついて、スーツの肩が落ちる。ぼくは苦笑して声をかけた。まったく他人事とは思えない。
「そんなもんだよ」
「そんなもんですか?」
「ぼくだってそうだよ。そこで譲れない人間だっているって。飛び込んだら成功できるのかもしれないけど、躊躇しちゃうよ普通」
 だからダメなんだ、と言われればそうかもしれない。でも本当にそうなんだろうか?

 あなたは夢のためにどこまで自分らしい生活を捨てられますか?
 それができなければやっぱり、夢をかなえることなんてできないと思いますか?
 資格がないと思いますか?


March 9 - column - 沈丁花

 だんだん暖かくなって冬が終わると、沈丁花の香りがする。
 僕は普段、ぼけっとしてるから、花の匂いなんて気にもしないけど、
 沈丁花には心揺らされるものがある。
 あの花は僕が愛した女の子を思い出させるんだ。

 沈丁花は夜匂う。家に向かう途中の道で。
 僕はつい立ち止まってしまう。
 朝夕は冷え込むからまだ息は街灯を浴びて白い。

 沈丁花の香りは僕に過去を思い出させる。
 あの子との楽しかった思い出。
 もう戻れない過去の幸せで僕の胸はキリキリと痛む。
 だけど、そんなに悪い痛みではない。辛いことは辛いけど。

 沈丁花の香りは思い出と強く結びついてるんだと思う。
 というより、沈丁花の香りは強すぎて僕の思い出にまで入り込んでいる。
 僕が精一杯恋した季節の花。
 僕は沈丁花をちっとも好きではないけど、嫌いにもなれない。

 何によ沈丁花はお節介すぎると思う。
 僕だってあの子を思い出したくない夜もあるんだよ。
 でも、そんなところもあの子みたいだと僕は苦笑いする。

(秋月ねづ)

March 8 - column - おかしな二人

 ぼくは眼に見えることに惑わされやすい。さらに言えばドラマなどでよく見られる典型で物事を測りやすい。たとえばハルオくんとモッチーがそうである。二人はてっきりつきあうものだと推察していたからだ。
 前述の飲みに行った「女性」とはモッチーのことである。モッチーはぼくの「いい男ランキング」第三位にランクインするくらいさっぱりとしたイメージがある。実際話してみて益々そう感じた。なんせ待ち合わせたときはモッチーの笑い声で居場所がわかるくらいだ。モッチーの笑い声は心底楽しそうで、クラス中に響き渡る。その傍らには大抵ハルオくんがいる。
 以前クラスでバーベキューをしたとき、芝生の上をハルオくんに転がされている……文字通りだ……モッチーを目撃したことがある。芝まみれになったモッチーが「ホント容赦ないよねー」と呆れつつ言ってハルオくんを小突き、また転がされるという不思議な光景だった。転がされているとき悲鳴というか笑い声を上げるのだが、心底怒ってはいない。直後に仲間と二人で組体操を始めるくらいに。放っておこうと心に決めた覚えがある。
 二人はとにかく仲が良かった。無邪気に罵りあうのが日課なくらい。しかしまったくそういう対象には思えないという。
「なんか幼なじみみたいだな」
 ハルオさんの言葉にモッチーがうなずく。
「うーん。そうだね。半年しか一緒にいないのに」
「風呂だって一緒に入れるよ」
「それはイヤ」
「見たらゲロはくけど」
 モッチーが笑いながら軽く小突く。
「俺目ぇ開けないで触るから」
「変態でしょ? この人どう考えても」
 ぼくに向けられた台詞を否定せずに、ぼくは聞いた。
「二人って、恋人の前でもそんな感じなの?」
 二人は揃って黙った。
「俺は、全然違うね」
「わたしも、そんなに出してないかな」
 ふーん。とぼくは思った。やはり好きっていう気持ちは文脈のないものなのだ。だからシナリオで書かれるようにこの二人がくっついたりすることもないのだろう。

 ではなぜ男女はつきあうのだろう。それは“タイミング”だ、というのがモッチーの意見だった。
「たしかに、流れがすべて上手くいくものだ、って言うなー」
「そうですよね。そうしたらぼくにだってつきあう未来があったのかもしれないわけですよ」
 慎ちゃんが言う。モッチーは慎ちゃんの心のNo.1である。それくらいかわいい。それに「いい男」なのは気風がいいからだ。気風の良さはいい女の条件でもある。タイミングがすべてを支配する。そんな話が周囲にはいつあふれている。ならハルオさんとモッチーががつきあうこともあるのだろうか。ちょっとシミュレートしてみよう。
「よし、じゃあつきあうか」
「絶対イヤ」
「俺もイヤ」
 二人笑う。
 こんなおかしな二人と話すのをぼくは結構気に入っている。

(タイミングの話はまた今度。実は一緒に行ったもう一人のメンツは慎ちゃんなのだ。慎ちゃんの話はタイミングを交えて長く書くことになるだろう)


March 7 - column - ハルオ式

 一緒に飲みに行ったメンツにハルオくんがいる。ハルオくんはいまもっともぼくが羨ましいと感じている男だ。たとえば話していて女の子の髪を平気でなでたり、肩を組んだりする。しかしまったく誰にも嫌われるということがない。その行状を紹介しようと思う。

Case1
 ある朝就職活動のためスーツを着てきたハルオくんは、とある女性の前で突然ワイシャツの襟を裏返してネクタイをゆるめた。
「ね、これ直して!」
 苦笑いしながらも気のいい女の子は優しく両手を襟に添える。その瞬間女の子に全身でもたれかかるハルオくん。
「ちょっと待って! ハルちゃん近い!」
 アシカのような動きで迫っていくハルオくん。必死で体重を支える彼女は慌てて襟を直す。「直った。直ったよ」
 ハルオくんは身を離す。
「ありがと!」

Case2
 ある日(昨夜ですが)ハルオくんは女性と隣合わせになって酒を飲んでいる。突然女性が「うわぁ」とか奇妙な驚きを示す。
「なに? どしたの?」
 問いかけると、女性はハルオくんの頬に軽く平手を入れながら言う。ハルオくんが軽く体を反らした。
「いまさ、椅子と腿のあいだに手を入れられた」
「はあ?」
 ぼくは間抜けな調子で問い返す。
「そんなとこ、普通手、入れるか?」
「無意識なんでしょ?」
 女性が聞く。ハルオくんが明朗に答える。
「うん。なんとなく」
「だからまた入れるなつーの」
 もう一度小突かれてハルオくんが手を抜く。
「でもここ(に手を入れるの)いいよね。落ち着く」
「……そりゃそうだけどさ」
 ぼくは呆れつつも落ち着くという感想を否定できない。
「手が湿って気持ち悪い」
 ハルオくんは今度は女性のジーンズで手をぬぐう。
「ふくな!」

 今日会社訪問の帰り、クラスメイトとハルオくんの話になった。彼女はハルオくんに胸を触られたことがある。腹から触っていって段々……という流れらしい(光景が目に浮かぶ)。彼女は「ま、いっか減るもんじゃなし」と言ったという。「女の言うことじゃないよね」というのは本人談。
「あんだけセクハラのネタをよく思いつくと思わない?」
 彼女の言葉に笑いながら同意した。
「それで誰にも嫌われない、ってのはすごいね。キャラだね」
「あのさ、バカでスケベな犬っているじゃない? 女性が近づいてくるといやらしいことしてくる犬。ああ、もうしょうがないよね。そういう感じ」
 ぼくは空想する。ハルオくんが犬になり舌を出して女性にまとわりついている。まったく違和感のない合成だった。彼女は結論付ける。
「あれは動物だからね。本能で生きてるから」
 ハルオ式はいやらしいけど、本能だからさっぱりしているのだ。
「なるほどねー」
 変に躊躇するから行為は恥ずかしいのだろう。もちろん迷惑であることは間違いないのだが。

「うらやましいよね。俺もやってみたいね」
 ぼくは隣の席の慎ちゃんに言う。
「ああでも、そういうことしようとするじゃないですか、軽くそんな振りしてみたり。そうすると慎ちゃんどうしたの? ハルちゃんに毒されてるよ? って言われちゃうんですよ。二番煎じなんです」

 ハルオ式は偉大なのかもしれない。


March 6 - column - タイミング

 今日はクラスメイトと映画を見に行った。ぼくはなかなか誘いに乗らない。飲みに行こうとか、出かけようとか。べつに友人を減らしたいわけではなく、純粋に金がない。
 映画の内容はたいしたことはなくて(千円でラッキー)、驚いたのは出てからだった。大通りに出て交差点を渡っているとき、サングラスをかけようとしたら片方のつるが見当たらない。ワイシャツのポケットにも入っていない。この後飲みにいく流れだったのでこれ幸いと別れを告げた。するとみんな一緒に探してくれるという。ぼくは弱り果てて走って映画館まで戻ることにした。
 幸い座席の下につるは落ちていた。映画館の前でみんなは待ってくれている。どうにも抜けられない雰囲気(というより自分で義理を感じて)になってしまった。
「まさか飲みに行きたくないから外したんじゃないよねー」
「ばれた?」
 冗談として答えたが、利用しようとしていたのは正解だった。

(明日に続くことに今決めた)


March 5 - column - 凩くん

お○ゃ○じょド○ミの脱衣ブロック崩し、裏面までクリアできました?


March 4 - column - 墓穴

 職場での上司であるSさんが、僕の事をこう、新人アルバイトの女の子に紹介しました。
「こいつが凩、ロリコンなんだ」
 すいません、言葉に詰まったもので、すげーリアリティを皆に持たせてしまったようです。
「いやでも俺、良い意味でも悪い意味でも子供好きって言われますし」
 酔っていたせいで余計な墓穴まで掘ってしまいました。

(凩 優司)

March 3 - column - サングラス

「KENSEIさん、どうしたんですかそのサングラス」
「花粉症でさ。ちょっとは違うかな、と思って」
「かっこいいー! 黒澤監督みたいですよ!」
「……世界のかよ」


March 2 - column - 季節は春へ

 学校で3月の予定表を渡されたとき、残りの日数の少なさに、とまどった。順調すぎるくらいクラスでの日々は楽しい。土日にも通っていいくらい……それは言いすぎだが。半年という訓練期間は短い。始めたときからわかってはいたのだが、具体的に回数を数えられるとひどく落ち着かない気分になる。
 別れの予感。別れてしまえば、新しい場所で新しい関係を築いていかなければらない。そうして築くことに集中できる。予感は実体がない。だからいつも三月は不安定になる。
 いままでできたんだから、次も大丈夫さ。自分に言い聞かせる。ただ次はいままで体験したことのない「社会人」という階級だ。なってしまえばなんの違和感もなく体になじむものかもしれないが、失敗したときのリスクはより高くなる。できればこのままでいたい。こんな風に感じるのも現在の居心地がいいからだろう。去年のいまごろはどんな職業でもいいから勤め人になってやる、と息巻いていたのだから。

 ぼくが以前バイト先を辞めたのは仕事を干されたからだ。二年ほど働いて気心知れた連中とにぎやかにやっていたのだが、新任の店長がやってきた。店長(男性)は他店のお気に入り(女性)をわざわざ店に連れてきた。ぼくは店長のお気に入りを叱りつけて説教し、泣かせた。他の人が面と向かってなにも言わず陰口ばかり叩いている。ぼくは言うなら当人に、という考えだ。なぜならその方が当人のためになる。ある日いい加減お気に入りの傍若無人さに耐えかね三十分ほど説教した。そんな自分勝手なことでは誰もあなたと本当の関係を結んではくれないぞ。当人も泣いて詫びた。周囲は内心喝采したようだった。翌日、ぼくは入荷を担当していた部署から外されていた。お気に入りの受け持ちが広がって、ぼくの部署も組み込まれている。いつかこのことは小説に書いてやろうと思ってはいるけど、自分のことを否定されたのは久しぶりのことだった。
 追い討ちとして社会保険の適用枠からも外された。これを外されるとどうなるか。内部の規定では十六日以上の勤務ができなくなる。たいてい二十日ていどはみな働いているから、数万円収入が削られる。フリーターは原則適用という不文律があったのだが、曲げられたらしい。実家にいるので痛痒も感じない嫌がらせだったが、一人暮らしなら深刻なボディーブローだ。辞めろ、と直接は言わずに行う手口に憤慨したものの、これ以上バイトを続けることの無意味さを悟った。正義感なんざ簡単に敗北するのだ。エリア長は同情してくれたが、なにができるわけでもない。
 このときぼくは痛烈に思い知ったのだ。所詮ぼくはただのバイトだ。社員ならまだ戦うこともできたし、正直現時点でもぼくは店長より管理能力があるだろう。しかしただのアホでも立場さえ手に入れれば勝利だ。ぼくは確実に不遇で、アホは暢気に幸せを貪っている。社会人になろう。個人的な復讐心だ。
 バイトを辞めて就職活動を始める。ただ就職したいだけなのだから空回りするばかりだ。なかなか決まらない。フランチャイズ飲食店の店長に合格したこともあったが、果たして自分のやりたいことなのかどうか迷った。意地だけで勤めるには熱が冷めていく。そんなときに妹も通っていた訓練校のことを選択肢として思い出したのだ。自分のやりたいことはなんなのか。科目の中に少しでも近づく方向があるような気がした。見返すってのはそういうことなんじゃないか、と。

 訓練校では興味のある分野、DTPのクラスを受験したがあえなく不合格。結局印刷に関する企画営業のクラスで二次募集に引っかかる。クラスに通いながら充実した日々を、実に個性的な連中と送る。どこに行っても仲間に恵まれると感じる。それとも、世の中ってのはこんなに愉快な人材があふれているのだろうか。
 与えられた課題をこなしながら自分の知識を高めることで満足していた。初めて触れるMacやAdobeのアプリケーションは好奇心を刺激したし、企画営業という仕事も悪くない。定職につけるのならそれもいいかもしれない。そう考えた。ただ「求職票」というものを提出する段階になってふと思い出した。
 ぼくは以前のバイト先を辞めたあと半年ほど、就職活動しながら別のバイトをしていた。ぼくはそこで片想いして粉砕された。彼女の片鱗をのぞいただけで血がのぼってしまい、こじあけようとして簡単に拒絶された。(その人が「包丁男」の夢に出てきてるんだけど)バイト先の彼女。あの子との数少ない会話のなかで、なぜこのバイトに来たのか、という話をした覚えがあった。資金を貯めるためだ、とぼくは答えた。
「前のバイト先は店長とあわなくてクビになった。
俺はいままで逆算して人生の計画をたてるということをしてこなかった。
けど、どうしてもいまは本を作る側に回りたいことに気づいた。
ほんの少しでも近づきたい。バイトでもいいから潜りこみたい。
だからそういう仕事を探すし、そういうバイトを見つけたらここを辞める」
 ぼくはなによりも彼女に対して嘘つきにはなりたくないと思った。

 あれから一年たって、ぼくは自分の未来のために社会人になろうとしている。純粋に岐路を選択しようとしている。将来について真剣に考える機会をくれたアホ二人組にある意味感謝しているくらいだ。本心を言えば、本を作るという夢へは遠い。でもぼくは進まなければならない。このままでいることはできない。わがままな子どもではないのだから。
 春はいつもふとした空白に、静かで浮き足立った、くすぐったいような気分を運んでくる。それでいて追い立てられて、忙しさの中でみなが一斉に取捨選択し、重要な決定が行われ、同時進行で、さっさとアルバムのページに収められてしまう季節だ。始まったばかりの三月のカレンダーはきっと瞬く間にめくられる。そしてまた新しい出逢いが待っている。
 ぼくの開ける扉がどこへつながっているのかはわからない。ただ安定を捨てたこの一年。ぼくは良い体験をいくつもした。恋もしたし、友人も増えた。意志が、世界を拓く。開けようと思うから扉は開く。失敗したって、またこうして扉の前に戻ってこれるのだ。それだけは間違いない。
 上手くいく。きっと上手くいく。そう信じよう。
 そう……

 店長に、お気に入りの女性さえいなければ、ね。


March 1 - column - フーリガン・コンビネーション

送信者:秋月ねづ
件名:お疲れ様。
ちわす。ネヅ@今回限定幹事今が旬。です。

皆さんちわっす。参加した方はお疲れです。
僕は幹事とは名ばかりで
何もしなかったような気がしますが、
まあ無事で何よりということで。
僕は土曜日終わったあとケンセイの家に
泊めてもらって(お邪魔様)
次の日は別の面子と飲むという
ハアドスケジュールでした。
今回印象的な出来事といえば
ケンセイが地元地下鉄駅の自動改札を飛び越したことでしょうか?
ニュースなどで、イギリスのフーリガンが
地下鉄の改札を飛んでいるのは見たことがありますが
日本で見たのはアレが初めてでした。
衝撃的な映像でした。彼の結構過激な一面を見た思いですね。

送信者:KENSEI
件名:好奇心
みなさま。おつかれさまでした。
秋月とは二日連続の飲み〜
花粉がヤバイ。なにもする気にならんぞ。
>過激
ぼくは過激です。当たり前です。
ただぼくの移動距離は定期の範囲内なので、
自動改札を飛び越える必要なんてまったくなかったのですが、
どれくらいバレないものなのかなーと思い飛び越えました。
(まったくバレませんでした)
ぼくは一緒に飛んだどこかの誰かとは違って、
そういうところはキチっとしています。
用意周到な過激なのです。
某フーリガン日本予備軍などは、
完全に金額が不足していたから飛び越えましたからね。
犯罪者です。

送信者:T.T
件名:挑戦(Re:好奇心)
こんにちは。T.Tです。
仕事場の先輩の粋な計らい(?)で今日はなんと残業ナシです。……冗談だったかもしんない。喜び勇んで勇み足。一番先に帰っちゃったので、他のみなさんは残業してるのいるのかもしれません。まぁ、知ったこっちゃないです。家でビールを飲んでその後大好きな歌い手さんのライブDVDを観ながらワインを一本あけて、素敵なアルコールライフを満喫いたしました。

> 今回印象的な出来事といえば
> ケンセイが地元地下鉄駅の自動改札を飛び越したことでしょうか?
> ニュースなどで、イギリスのフーリガンが
> 地下鉄の改札を飛んでいるのは見たことがありますが
> 日本で見たのはアレが初めてでした。

> ただぼくの移動距離は定期の範囲内なので、
> 自動改札を飛び越える必要なんてまったくなかったのですが、
> どれくらいバレないものなのかなーと思い飛び越えました。
> (まったくバレませんでした)

飛び越えるのが流行っているようなので、これからは私もちょくちょく飛び越えていこうかと考えをあらためた所存です。

「飛び越える」って発想はなかったなぁ。(盲点)
私は、自動改札を飛び越えたことはありませんが、通過したことならあります。
ええ。そうです。
文字どおり「通過」するんです。切符を入れずに。
今、「突破」という適切な単語を思い出してしました。
「突破」するんです。
すごい音。しますよ。ドン!って。いやバキッ!かな。それともメキメキ!!……
ねぇ?どれがいい?

駅員「キミィ!!!」
俺「すいません!急いでいたので!!(正論)」(猛ダッシュ中)

しょっちゅうはしません。
切符が無いときだけです。(当時:高ニ)

まぁ、腹に多少の衝撃はありますよ。しかし、躊躇せず走り抜けちまえばあの程度の障害は物理的にはどうってこと無いです。(体験談)

> 用意周到な過激なのです。
> 某フーリガン日本予備軍などは、
> 完全に金額が不足していたから飛び越えましたからね。
> 犯罪者です。

↑金額が不足していなくても犯罪ですよ。たぶん。

では、また。


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