anarchists's column back number
(@n@)
昨日載せた映画評はクラスのみんなからも褒められた。いままでやってきたことの延長線上なので、戸惑う。文をほめられるのはうれしいが、なにひとつほかには成長できていない。素直に喜べずにいた。

あるクラスメイトと飲み会で席が隣になった。一度だけ話したことがあったその彼は、先生の映画評の感想は見当違いだという。
「ぼくはKENSEIさんの文章を読んで暗い情熱を感じました。行間からあふれだしてますよね」
いきなりの暴言にひでえなあ、と苦笑を返す。うつむきがちに喋っていた彼が目線を上げる。ああそうか、と思い至る。
「先生は高尚だとか味があるとか言ってましたけど、そんなんじゃないんです」
「……」
「……生きづらい人なんだろうなーと思いました」
彼もまた、なにか得体の知れないものを抱えて生きている書き手だった。
ふと酒席で騒ぐクラスメイトたちを見渡す。なごやかさで満ちた、暖かな空間を。
「ぼくたち、あっち側へは入れないな」
「……はい」

映画評とあちら側/KENSEI 030429
今日は受けた講座で入賞した「千と千尋の神隠し」の映画評を載せる。

「極彩色の夢」
劇場で鑑賞したとき、極彩色の夢に投げ込まれたような心地がした。まるで宮崎駿の右脳を、ぶちまけられたような。
「千と千尋の神隠し」が第75回米映画アカデミー賞を受賞した。英題は「MIYAZAKI'S SPIRITED AWAY」。受賞によって米国での興行成績も急上昇している。日本でも空前の大ヒットとなったが「なにがおもしろいのかわからない」と語る人も多い。
ハリウッドでも認められたようにこの作品は純然たるエンタテインメントだ。逆に言えばこの宮崎流の<外連(けれん)>をどこまで受け取るかが、この映画の魅力と等しい。圧倒的な映像技術。愛すべきキャラクターと仕掛けられた行動の数々。逆に言えばこの2つだけが今回の柱であり、映画としての完成度は低い。アメリカで評価されたものがこの<外連>だけだったとしたら、米の映画文化は決して深くない。
ではこの<外連>に包まれているものはなんだろう。この映画にテーマはない。監督の口から出るのは、跡付けの理屈ばかりである。実のところは、宮崎監督の妄想ではないか。矛盾だらけでひどく都合のよい設定も、すべて<夢>だからだ。宮崎駿は脚本を書かない。すべて絵コンテで創作し、できた分から制作スタッフに渡してしまう。だからフロイドではないが、無意識に現れた心の闇が、10歳の少女を所有する。玩ぶという試練となって現れた。すべての宮崎作品にこの傾向は顕著だが、今回は特別表面化してしまったのだ。
だが欲望まで見据えたとき、違った局面が見える。好きな女の側をうろつくことしかできず、金しか差し出せない<顔無し>へさらに共感を覚える。<豚>になる醜い父親に自身を重ねる。<ハク>のように颯爽としたいと願うし、同時に<ハク>のようになれない現実を知る。
宮崎の欲望までがアカデミー賞であるなら、もう少し世界は平和になるだろう。米国人も自分の一部に<豚>になる父親がいることを悟ったのだから。

先生の感想は出だしがうまく、『高尚で韜晦した文だが味がある』ということだった。

映画評・千と千尋/KENSEI 030428
本日でKENSEIは29歳でございます。
とくにこの歳になりますと誕生日に際して深い感慨もありませんし、女性のように三十路への恐怖もありません。
ただ「三十にして起つ」という言葉が示すほどの、力量(ヴィルトゥ)を持ち合わせているか。そこには不安に感じています。

さて、コラムを再開しようと思ってます。
文章を今日からまた書きはじめますので。
また書きはじめる理由?
そんなもの理由は一つに決まってるじゃないですか。
(こんな最悪な誕生日もないでしょう。いや真剣に)

最良のはずが/KENSEI 030427
名台詞の映画:ロード・オフ・ザ・リング 二つの塔

またしてもよく作ったなあ、という感想。前回に続いてレゴラスの動きに痺れる。あの騎乗は格好良すぎです。ギムリもあんな楽しいやつだったとは知りませんでした。
でも今回はやはりサムでしょう。サムの台詞が心に残りました。思ったのは「指輪物語」はまさにサムの言っていたとおりの物語ではないかということ。
前回はガンダルフが、今回がサムが、大切な言葉をくれました。
感動させようという気配は読めるんだけど、素直にかみ締められるのは、逆に大人になったからかもしれません。高校生くらいだったら、鼻で笑っていたかもしれない。
点が低いのは全体のストーリーで中盤にあたるので、展開が緩かったからです。

満足度 ★★★/KENSEI 030415
「KENSEIさんはおいくつなんですか?」
「俺ですか。もうすぐ29(歳)になります」
「ウソ! 25・6だとおもってましたよ。格好が若いからそうみえませんよね〜」
「……」


……/KENSEI 030327
ひさしぶりに会った友人から、
「どうなのKENちゃん彼女はできたの?」
と聞かれたので、とくに当てはないけど元気よく、
「うん。がんばるよ!」
と答えた。
すると友人は、
「アンタってあいかわらず恋だけはしてる男なのねえ」
と意地悪そうに笑った。
気に入ったので採用。

こんばんは。
あいかわらず恋だけはしている男KENSEIです。


片想いならセミプロかもね/KENSEI 030318
よくまとまってる映画:ボーリング・フォー・コロンバイン

展開の早さとジョークのおもしろさは気に入った。
ただし、全般はよくまとまっているものの、話題にするほど刺激的な内容ではない。歴史をなにも知らない(というより考えない)人が見ると衝撃を受けるかもしれないが、現状を一面からきちんと分析していることは優れているものの、行列に耐えて鑑賞するほどの映画ではないと思う。観て損はないが、話題先行のために「こんなものか?」と落胆するかもしれない。
「ギャング・オブ・ニューヨーク」のときもそう感じたが、アメリカの歴史ってのはあんなものだ。

内容に触れると、印象に残ったのは「恐怖と消費」というキーワードである。
頭のいいやつは気づいていたのかもしれないが、メディアが「恐怖」を先導し、その先には「消費」すなわち誰かの「利益」が存在しているという仕掛け。言われてみればその通りだし、すでに指摘されていることなのだが、例を挙げて解説されると納得。日本も同じ現象がある。マスメディアは警戒しなくてはならない。
余談だが、この映画のためにカナダは外国人犯罪率が増えると危惧するのは私だけだろうか。

満足度 ★★★/KENSEI 030307

column_index