Four knight defence

煎餅屋光圀

 名画座でヘップバーンの古い映画がかかっていたので、僕は沙羅を誘って久しぶりに街に出てみた。
 昼下がり、空はどんより曇って、湿っぽくなま暖かい空気は埃の臭いがする。沙羅は水色のワンピースの裾を風に遊ばせながら、水分を吸った前髪を必死に手でのばしては、ちょっと不機嫌そうに鞄を振り回して僕の太ももを軽くたたいた。僕は今日、早くも2つポカをやらかしてしまったのだ。
 まず、待ち合わせに5分遅刻した。いつも待たされるのは僕の方なのに、こんな日に限って沙羅は10分も前に来ていたらしいのだ。「15分も待った」とこの娘は言うが……いや言い訳は止めよう、だってもしかしも無く僕は待ち合わせに遅刻したのだ。とりあえずこれが1つ目。2つ目は沙羅が5センチ短くした前髪に気づかなかった。沙羅の髪は肩より少し長く軽くウエーブがかかっている。だいたい3週間に一回ぐらい毛先をそろえてもらうために美容院で5センチほど切るのだが、それに気づかないとこの娘は怒るのだ。だから僕は手帳にこっそり沙羅が美容院に行った日を書き込んでいて、3週目になるととりあえずこの娘の髪をいつもより意識することにしていた。
 でも、今回に限っては完全に不意打ちで沙羅は2週目に美容院に行っていて、その上前髪を切りすぎたと気にしているのだ。それに気づかなかったから良いじゃないかと僕は言いたかったが、そういうわけにもいかない事はわかっている。とりあえず、この時点で今日一日この娘が不機嫌な事は確定してしまったのだ。
 僕は3歩先を歩く沙羅の背中を見つめて軽くため息をついた。沙羅の事は彼女がまだランドセルを背負ってた頃から知っているが、プライドが高くて気むずかしいのは相変わらずで、それは身長と共に年々増加していき、才能が拍車をかけていった。それでも彼女はまだ高校1年生なのだから末恐ろしいというか、なんというか……
「ねえ先生、今日はなんていう映画?」
 ふと、沙羅が振り返りもせずそう聞いてきたので、僕は思考を中断して。
「Breakfast at Tiffany's」
 と間髪いれずに答えた。これ以上彼女を怒らせる訳にもいかない。僕はちょっとだけ靴を探すポール・パージャックの気分がわかったような気がして、思わず苦笑した。
「ジョージ・ペパトーニとヘップバーンの古典だね。主題歌が有名で、ヘンリー・マシーニとジョニー・マーサーの”ムーン・リバー”は、名前は知らなくても聴いた事ぐらいはあると思うよ」
 僕がそういうと、沙羅は肩越しにちょっと振り返り。
「ふぅん」
 と呟いてつまらなそうにそっぽを向き。
「私、ドーナツ食べたい」
 と、バス通りの途中でドーナツショップに吸い込まれていった。
 やれやれ。僕はちょっと苦笑すると、今日一日の予定をすべて白紙に戻して、甘い香りの満ちた店内へと沙羅の背中を追った。

 窓際に座って表通りを歩く人を眺めていると、暗い空から急に雨が降ってきた。僕は懐に手を入れ……そのままため息をついてテーブルの上に肘を戻して、テーブルの上の甘ったるいドーナツに視線を移す。禁煙なのだ。おまけに砂糖でコーティングされ、中にホイップクリームが鎮座在しているドーナツが3つも皿の上に乗っていて、飲み物は何を考えているのかジンジャーエールなんかがグラスに汗をかいていた。
「アイデア賞」
 沙羅はそう言って僕の顔を見ると、とても楽しそうに笑う。この嫌がらせは完璧に的を射ていて、僕に沙羅との付き合いの長さを思い出させるのに十分だった。沙羅とその父、裕貴さんと逢ってからもう10年……裕貴さんとは会えなくなってから5年が経とうとしている。日本最初で、国内ではあと20年は出ないだろうと言われているGMの称号を受けた最高のチェスプレイヤーが、早すぎるその生涯を終えてこの世に残した物は。その才能の片鱗を見せ始めた天才少女と、その娘に翻弄される哀れな不詳の弟子だったというわけだ。いや、抜け殻と言った方が正解なのかも知れない。少なくとも世間の評価はそうだった。一時期IMノームに手をかけた僕も、今ではレーティングを2000に保つのがやっとだ。
 あんなに長い夜を裕貴さんと過ごして、新たな一手の為に10代のすべてを捧げて来たのに、多分僕がこの娘と過ごした時間は裕貴さんと過ごした時間よりも長いのだろう。時間の流れというのは得てしてそんな物なのだ。
「雨が降ってきたね」
 僕は、今初めて気付いたというようにふと呟く。沙羅はちらっと外を見て紅茶に手を伸ばす。雨はアスファルトをしたたかに叩き、地面でけぶる様に小さな飛沫となって四散した。見上げれば黒い空に切れ目はなく、とても通り雨といった感じでは無い。
「そりゃ降るでしょ、台風が来てるんですもの」
 沙羅はそういって僕の目の前の皿に手を伸ばす。機嫌は自分の仕組んだ嫌がらせが想像以上の効果を与えたためか、それとも甘ったるい揚げ物と紅茶の取り合わせがよっぽど良かったのか、幾分か良好になっているようだった。
「相変わらず新聞もTVも見ないんだね」
「興味がないからね」
 沙羅がテーブルナプキンで口元のクリームをぬぐいながら言い。僕はジンジャーエールを一口飲んでそう答えた。
「生きていて、流動的な情報に影響されるのが好きじゃないんだ」
「ただ単に面倒くさいだけなんでしょ? 主に、買った服が時代遅れになるって事が」
 僕はまた懐に手を入れてそう言い、沙羅はそれを見て目を細め少し笑いながらそう答える。僕に言わせてもらえば沙羅の言葉は少し違う。別に面倒くさいって訳じゃない。なんでも受け入れるって事にちょっと疲れただけなんだ。他人の無責任な物言いと、それに踊らされる人々に付き合うのが。そういうのを面倒くさいと人は評するが、それは少し違う。
「歳を取ったって事だよ。10年も経てば誰だって10才歳を取る。物の見方も見られ方も変わる」
 僕は沙羅の左手にはまっている小さな赤い時計を見てそう答えた。この娘が高校入学の際、ねだられて買わされた最新流行のモデルだ。その時代に産まれた物は、すでに僕の手を離れて行っているのかも知れないと僕は思った。少なくともその時計は僕に何も訴えかけては来なかった。
「先生は歳を取ると無精になっていくよね、古い物に言い訳を探すようになるっていうか」
「洗練されていってるって、言ってくれないか? 日々加速していく時間の中で、変わらない物に価値を見いだす事は悪い事じゃない。それにはスタイルって名前があるんだ」
 スタイル。ハッ! なんて陳腐な言葉だ。こんな言葉に頼らないと僕は自分を正当化できなくなってる。それは僕が多分年々弱くなって行ってるって意味。人がダメになっていく課程はいくつかあって、僕の場合は洗練という言葉に置き換えられるケースだったって事だ。僕の前に幾人もの偉人達が同じ道を歩んでる事を最近本で知った。酒の力を借りれば今よりもう少し歩みは早かったのだろう。もちろんここで問題なのは僕がダメになってしまった課程ではなくて、過去の偉人と同じ過ちを犯したとしても、僕自身が偉人では無いって事なんだけど。少なくとも僕の生き方から何かを学んでくれる人はいなかった。
 裕貴さんが自殺したと聞いて僕は自分でもちょっと違和感を覚えるほどに冷静だった。僕はその時ハンガリーの国際サーキットにゲストとして参加していて、IMノームの2回目を達成しようとしていた。
 開幕シシリアン・ウイングギャンビットから始まったゲームは、クイーンズ側の応手を僕が上手く裁き、エンドゲームには2ビショップで僕の優位が決まって動きようが無く。相手はドローの道を探っていた。そのとき訃報を聞いて僕は。
「ゲーム中だから」
 と答え、キングを端に追いつめた。それだけの話だ。
 動かなくなった裕貴さんが白い灰だけになってしまって、骨を拾うだけの段階になっても僕は涙一つでないどころか、悲しいとさえ思わなかった。大事な人が死んでも、僕は何一つ変わらないんだなってそのとき思ったけど。沙羅は僕にバスタオルを投げつけて。
「髭ぐらい剃りなさいよ!」
 と、言って。はでにわめき散らした事を覚えてる。なんの事はない。ただ、単純にダメになってる事に僕だけが気付かなかったって事だ。
 裕貴さんは自殺する直前に僕に向けて遺言を残し、それで沙羅は長い間僕に対して辛く当たっていた時期があった。最後の言葉が実の娘でも、家族ですら無く、赤の他人の僕への言葉であった事。そしてそれ以上にその僕が立派な人間ではなく、唯の抜け殻だった事が許せなかったんだろう。だから、まあ……僕は沙羅の為に表層だけでも立ち直ってみせる必要があった。
 現状を把握しようとするとそういう事になるが、それは真っ赤な嘘で。やっぱり自分の置かれた状況を是としない、もう一人の僕が考えた言い訳なんだろうってなんとなく思った。つまりそれはそういうことなんだ。

「七夕って、いつも雨が降るよね……」
 ふと、沙羅はうつむいてカップの縁を指でなぞりながらそう呟いた。僕は半分上の空で頷く。窓の外は大雨で、その上風が強く吹きすさび、道行く人はみんな傘を横に向けて歩いていた。
「1年に1度しか会えないのに、梅雨時に七夕があるなんて神様も残酷だと思わない?」
 本来の七夕は旧暦で数えての話だから、現在では8月7日になるんだが……でもこの娘の言いたい事はそういうことではないのだろう。僕は黙ってもう一度頷いてみせると、沙羅はちょっと寂しそうに笑い。
「神様って基本的に意地悪だよね」
 と言って窓の外に視線を移した。
「私ね、雨が降るといつも思い出すことがあるんだ。遠足の日にね、天気予報で雨がふるって言われてたの。案山子みたいなおじさんが無表情で『雨の降る確立は60%です』って。私ね、遠足を凄く楽しみにしてたから。もう、泣いちゃうくらい悲しくてね。それこそこの世にこんな悲しいことが他にあるのかってぐらい」
 沙羅はそういうと、僕の目を見つめて笑う。
「だから、神様にお願いしたの。他に何もいらないから遠足の日には雨を降らせないでくださいって。そしたら本当に晴れたんだけど、かわりにパパがいなくなっちゃった」
 沙羅の言葉に僕はどんな顔をして良いのかわからず。ただ黙って胸ポケットに手を入れてタバコの本数を確認し、そのまま指先で唇をなぞった。沙羅はちょっと目を細めて僕を見つめ。
「ここ、笑うとこ」
 と呟いてちょっとだけ笑ってみせた。
 ガラスの向こうで雨はますます激しさを増していく。バス通りの緩やかな坂道を救急車が走っていくのを見ながら、昔本で読んだ枯渇した街をなんとなく思い出した。
 長い間沈黙が僕らの間に降り積もっていき、店内の歌のないbgmは2ループ目に入ったみたいで、さっき聴いた曲がもう一度流れはじめる。僕はその曲だけを知っていたけれど曲名を思い出すことはどうしても出来なかった。古い曲だ。
 沙羅は僕の顔を見つめると、自分の唇を指でなぞって微笑んだ。
「……私ね。先生のことずっと嫌いだったの」
 そう言って沙羅は自嘲気味に耳にかかった髪をかき上げる。それはとても綺麗で僕の知らない顔だった。僕は薄く笑って言う。
「今でも?」
 沙羅もちょっとだけ笑ってみせて、首を振った。
「今は……よくわからない。私の中に先生を嫌いな私と、そうでない私がいて、どっちがほんとかわからなくなってるの。そうでない私も、先生をパパの代わりだって思ってるだけなのかも知れないって……ねえ、先生。私が最初にチェスを教えてって言ったときのこと覚えてる?」
 僕はうなずきながら、氷だらけになった薄いジンジャーエールをストローでかき回した。思い出すには少し辛い思い出だ。それは沙羅が中学に上がってちょっとの頃の話。僕は1年以上もチェスピースにさわってもいなくて、裕貴さんがプノンペンのおみやげに買ってきてくれた大理石のクイーンは、埃だらけのクラウンの向こうで少し泣きながら僕を見つめていた。生前に裕貴さんがこのクイーンを指で弾いて言った言葉を思い出す。
「なあ……お前はなんの為にチェスを指す?」
「勝つことが楽しいからですよ。相手の攻撃プランを打破したり、こっちのビショップでディフェンスラインをかき回したりして、あいてのキングを追いつめる。この世の中にこれ以上に楽しい事があるなんて信じられない」
 その頃の僕はまだ若くて、裕貴さんの抱えている闇というものがわからず、そんな物があるなんて事に気づきもしなかった。勝つことがただ単純に嬉しくて、負けることはただ悔しい。それだけしかわからなかった。若さと言うよりは愚かさと言えるのかも知れない。
「勝つことが楽しいか……」
 僕の言葉に裕貴さんは盤上のクイーンをつまみ上げて。
「じゃあ、もし勝てなくなったらお前はチェスを止められるのか?」
 と呟いて、少しだけ笑った。古いレコードプレイヤーから流れていた、ゆっくりとけだるい音楽がやむと、あたりは夜の静けさに支配されたまま、時計の秒針が刻むコツコツという音だけがどこか遠くの方でなっている。正直、僕は裕貴さんの言ったことなんか、考えたこともなかった。僕の困った顔を見て、裕貴さんは少し自虐的に笑いながら呟く。
「俺はゲームの終わった後いつも思うんだ。やっと終わった。もうこれ以上指さずに済む。もう2度とチェスなんかやるもんかってな」
「冗談でしょ?」
 僕の問いに、裕貴さんは曖昧に笑って答えなかった。ただ一言だけ。
「こと、チェスというゲームに限っては負けて得る物は何も無く、勝って失ってしまう物も少なくない。しかしそれでも勝たなきゃならない時があり、俺はゲームを止めることが出来ない……な? どう考えても阿呆のやることだよな?」
 そう言うと、裕貴さんは盤上に駒を置き、ゆっくりと僕の頭をなでる。
「楽しいからか……正解だよ。ソレ」
 そう言った裕貴さんは、1週間後に自室の天井の梁につるしたロープで帰らぬ人となった。今でも僕は裕貴さんが言いたかったことが何なのか考えるときがあるけれど、でもそれは所詮無駄なことなんだって、頭のどこかでわかっている。どんな答えを出したとしても裕貴さんはきっとこう言うのだ。「正解だよ。ソレ」裕貴さんはそういう人なのだ。
 僕は少し苦笑して、クラウンにつもった埃を刷毛で丁寧に払う。沙羅が僕にチェスを教えてくれと言うなら、僕はそうしようと思う。裕貴さんがどう思うかなんて知ったこっちゃ無いんだ。僕は裕貴さんの自殺に少なからず腹を立てていたし、それは沙羅も同じなのだろうと思うと、とても悲しくてたまらなかった。
 沙羅は言う。
「私ね……本当はチェスなんてちっとも好きじゃなかった。ううん、ハッキリ言って大っ嫌いだったの。でも、先生がチェスを止めることを私は許せなかった。私達からパパを取り上げておいて、自分だけは楽になろうだなんて……こんな奴もっと苦しめばいいのにって……酷いよね、あたし、先生が断れないことを知ってたのに」
 沙羅は額に手を当てて、少しだけ笑いながら泣いていた。僕は静かに頷いて呟く。
「わかってるよ」
 僕は沙羅の頭に手をのばした。
「沙羅が裕貴さんを嫌いになれないって事も、その代わりに僕を憎もうとしていたことも、その理由も意味も全部わかってる」
 僕が優しくそう言うと、沙羅はやっぱりちょっとだけ笑ってみせて静かに首を振った。それから、小さく一つ頷くと手提げの中からハンカチを取りだして目元をぬぐい。顔を上げて僕の顔を見つめる。
「私、チェスも先生のことも……もう好きか嫌いかよくわからなくなっちゃった。もし先生がキスしてくれたら、どっちかわかるのにって思ったんだけど……やっぱりダメみたい」
 沙羅はそう言ってちょっと苦笑した。
「だって、先生の中で時間はあの時のまま止まってて、私は何時までも小学生のままなんだもん」
 言ってしまって、沙羅は苦笑したままため息をつく。
「私……バカみたい」
 窓の外では大きな雨粒がアスファルトの水たまりにいくつもの波紋を作っては消える。でも、その光景はどこか別の世界で起こっている風景としか僕には思えなかった。
「そんな事はないよ」
 店内のオレンジ色の光の中にとても長い時間が降り積もっていき、僕はそれだけ言うのがやっとだった。今、僕らの間に目には見えないけど現実的な重みを持った冷たい雨がふる。
「あれから5年経った、物の見方も物価も考え方だって変わった。僕も5年歳を取り、君も5年歳を取った。そして5年という月日は決して短くはない」
 僕の言葉は嘘ばっかりで、自分でも笑えてくるほど情けない。僕はどうしてもタバコが吸いたくなった。
 沙羅は僕の目を見て薄く笑うと、手提げから2つ折りの小さなマグネット式のチェス盤を取り出して、そっと腕時計を外してテーブルに置く。
「証明してみせて」
 沙羅は赤い髪留めそのまま口にくわえると両手で後ろ髪を書き上げ、そのまま結わえて言う。それは彼女の中のスイッチが入った合図。
「もし、私が勝ったらキスして。それで先生を引っぱたいてもう2度とチェスなんか指さない」
 そう言った彼女の目から一筋涙があふれて来るのを見て、僕は頷く事しか出来なかった。

 ねえ、裕貴さん。このゲームに僕は勝った方が良いんでしょうか? 僕は内なる深い泉に雨粒で波紋を広げてみたけれど、答えは何も返っては来なかった。
 沙羅はしなやかな指先で小さなプラスチック製のナイトをセンターに送る。その姿はまるでないてるようにしか見えなくて、勝っても負けても失う物の方が多いって事しかわからない。すべては8月の通り雨であったら良かったのに……僕は4つのナイトが盤上でにらみ合うその展開を見て呟いた。
「Four knight defence」彼女にしては消極的な手だ。おそらく彼女も迷っているのだろう。僕らはお互い答えを出せずに、ただ盤上のナイトだけがクルクル踊る。それはとても滑稽でなんだか寂しかった。
 僕は耐えられなくなってインテンショナル・ドローを申し込もうと思ったが、彼女は多分聞き入れないだろう。リザインも多分耳に届きはしない。彼女の望みはただ一つ。完全決着でキングが盤上からいなくなることだけだ。僕は心を殺したままだまってクイーンでポーンを刎ねた。
 ねえ、裕貴さん。貴方はいまの僕を笑うのだろうか? 貴方から教えてもらったことは数多いけれど、何一つとしてこんな時にや役に立ちそうにありません。一つだけわかったことがあるとすれば……
 裕貴さん、貴方が言ったとおり、やっぱりチェスは阿呆のやる遊技です。

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